大晦日と違ってどちらかといえばのんびりとした、元旦を過ごしはほっと息をつく。 「、疲れた?」 周助の言葉には軽く首を横に振る。 「んー別に平気」 今はテニス部のメンバーと初詣に出かけた帰り道で、割と静かな時間を好むは人が多いところも賑やかに騒ぐのも苦手である。 確かにメンバーも置く賑やかで、初詣の客で人でも多かったがはそこまで疲れなかったし、逆に久しぶりのことで楽しかった。 「なら良かったんだけど、途中人酔いしてたでしょ?」 やはり周助にはばれていたらしく、僅かに肩を竦められる。悪くなれば問答無用で家に連れて行かれていたかもしれないが、そこまでではなかったので黙っておいてくれたらしい。 「悪かった、心配させて」 の言葉に、周助はくしゃりと頭を撫でた。 線の細く見える周助はテニス部で鍛えていて、見た目よりも体力があるが、はテニス部のメンバーと仲は良いが、もともと体が丈夫でないおかげで運動とは無縁と生活をしている。 ここ最近は体の方も成長したせいか、あまりそういったことも少なくなったが、周助はいまだに気にかけてくれているし、実際の体調の変化に気付きやすい。 申し訳ない半分、それが嬉しかったりするので、くすくすと笑うとこつんと軽く小突かれる。 「人が心配しているのに、随分楽しそうだね」 黒いオーラを出しながら柔らかな笑みを浮かべる周助に、がぎくりと体を強張らせる。 「ごめんなさい。でも楽しかった」 誤魔化し半分あとは純粋に礼を言えば、機嫌も治ったようで「なら良かった」とほっとしたような言葉が返ってくる。 「そういえば、周助はなんて願い事した?」 願い事というのは、口に出したら叶わないというのを聞いたことがあるが、やけに熱心に手を合わせる周助の姿を思い出し聞いてみる。 「家族の事と、の事」 テニスが好きな周助の事だから、試合に勝てるようにという願い事が入っていると思っていたので、それがないことに驚く。 の表情から何となく言いたいことがわかったらしく、周助が笑った。 「僕はテニスが好きだけど、こればかりは願い事をしてもね」 確かに、勝つのは実力なのだし、不慮の事故や怪我がなければ神頼みで勝てるものでもない。 「だから、家族の健康と、の体が丈夫になるように祈っていたんだよ」 まだ体もそんなに良くもないので、相変わらず心配をかけているのかもしれない。 「周助に心配かけないように、ゆっくりでも体力づくりしないとな」 の言葉に周助は「ほどほどにね」と笑う。 「で、は何を願ったの?」 爽やかな笑顔に、は口ごもる。 「僕が教えたんだから、教えてくれてもいいよね」、と無言だというのにそんな言葉が聞こえた気がする。 「皆が健康で過ごせますようにと、今年も周助と一緒にいれますように……」 の言葉に、周助がくすくすと笑う。 「去年も一緒だったんだから、今年も一緒だよ。神様にお願いしなくてもね」 何でもないようにサラっと言われたが、頭の中で反芻するとなんとなく気恥ずかしい。 ちらりと周助をみると、いつも笑みで閉じられている目がすっと開いている。 深いその色に吸い込まれそうになり、引き寄せられて秀麗な顔が近づく。 「今年もよろしく」 こちらが口を開く前に、口唇が塞がれ吐息すらも奪われる。 今年も来年も、その先もずっとずっと共に居られますように。 ー幕ー |