たまには群れてみましょうか

 11月の町並みはだんだんと冬に近づき、はらはらと枯葉が舞い落ちる。
 そして、ハロウィン後だというのに気の早い商店が、もうクリスマス用品をディスプレイしている。
 木枯らしが吹き始めた寂しい街の景観も、そのおかげで幾分華やかに見える。
 もともと日本にはない習慣ではあるが、何でも取り入れる国民性故か日本では既に一般化された行事だ。
 どちらかと言えば日本の伝統を重んじてきた家に生まれ育ったとしては、あまり馴染みの無い行事ではあるが、それでもこの雰囲気は嫌いではない。
 歩く人々の楽しげな笑みや、色とりどりのイルミネーションやツリーを見ると、不思議とこちらも笑みを浮かべたくなる。
「クリスマスなんて祝うの?」
 隣から聞こえた声でそちらをみやれば、隣を歩く雲雀は些か不機嫌そうに眉根を寄せていた。
「家ではやらないが……今年はリボーンの『ボンゴレ流』とやらに呼ばれそうな気がするな」
 家族仲が悪いわけではないが、の家はイベント事に疎く既にそれらに心を躍らせる歳を過ぎているため、そう言った習慣自体がない。
自身は昔からそんな環境にいたおかげで、やらないのが普通であるが気を使っているのか、最近はリボーンから七夕や誕生日会などのイベントによく招かれている。
 脇から聞こえた「ふぅん」という素っ気無い声に、は苦笑する。
 これ以上、群れるのを嫌う雲雀にイベント事の話をして機嫌を損ねても仕方ない。話題を別のものに移そうとすると、雲雀がこちらをじっと見つめてくる。
「クリスマスパーティー、しようか」
 唐突のその言葉に、は思わず足を止め、瞬きをする。
 が止まったことに気づいた雲雀が二歩ほど離れたところで、足を止めて「どうしたの」と聞いてきたので、慌てて雲雀の隣に並んで歩き出す。
 それより、聞き間違いで無ければクリスマスパーティーという言葉が、雲雀から出てきた気がする。
「風紀委員でやるのか」
 中学生にしては厳つい顔の男たちでクリスマスパーティーというと、なんだか似合わない気もするが、なんだかんだ言っても風紀委員は雲雀と草壁を中心に仲が良い。もしかすると、親睦会のようにやるのかもしれない。
 そう思ったのだが、雲雀の眉が跳ね上がる。
「風紀委員でクリスマスパーティーをやる必要がないんだけど。僕は君に聞いたんだよ」
「……はぁ」
 思わず気の抜けた返事を返すと、ふんと鼻を鳴らされた。
「草食動物と過ごすなら良いけどね」
 ついっと背けられた雲雀の表情は、怒りというのではないが決して機嫌のよいものではない。
 つまるところ、

「拗ねているのか……」

 つぶやいた声は聞こえなかったらしいが、思わず浮かべてしまった笑みで、雲雀の眉間にしわが寄せられる。
「クリスマスプレゼントは何がいい?」
 そう尋ねれば、一瞬驚いた顔をしたが直ぐに幾分機嫌のよさそうな表情に戻る。
「そういうのは、贈る側が悩んで決めることでしょ? 僕も何かあげるよ」
 リボーン達の時にも出し物を悩んだが、今回はより慎重に選ばなければならないらしい。
 くすくすと笑うと、今度は機嫌がいいのか睨まれず、そっと手を絡められた。

ー幕ー

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