宝探し

 吹きあがる妖気に生命の呻き声。

「酷い有様だな」

 とんと枯れ果てた木を軽く蹴り、は空高く跳躍する。

 常人であればタタリ場に近寄ればただでは済まないが、腕に抱えるいくつかの神の器と、自らの力よってそれは免れている。

 ふわりと降り立った古い遺跡の最深部に、手に抱えていた神器の一つを落す。

 光り輝く神器は深い妖気の渦の中に落ちて、やがてその輝きは見えなくなった。

「ユーも物好きだね。そんなところに置いていくなんて」

 ふと背後から聞えた声に振り返れば、何時の間にかウシワカがいた。

 少々呆れ顔のウシワカに玲は小さく笑って見せる。

「簡単に見つけられる所では、宝捜しはつまらぬだろう?」

「確かに」

 十六夜の祠の動きを感じ取ったは、大切に守ってきた勾玉やら刀やらの神器を、ナカツクニのあちらこちらにばら撒いていた。

 神の器は神にしか扱えないので、妖怪の手に渡っても悪用される事はない。

 あえて面倒なところにおいて行くのは、その方が彼の神が力を取り戻すのに都合が良いからだ。

 まぁ、いくつかは金が入用だったので商人や、宝の帝に高く売ってしまったが。道すがら妖怪の持つ銭や骨董品で買い戻すことも出来るだろう。

「で、もうひとつクエスチョンがあるんだけど良いかな?」

「どうした?」

「水晶のヘビイチゴ。アレもユーが持っていたはずだよね? 何処に置いたか教えてくれると嬉しいんだけど」

 にこにこと笑みを浮かべたウシワカに、も同じように柔らかな笑みを返す。

「さぁ? 何処に置いたか忘れたな」

「ミーに探せって事か。全くユーは人が悪いね」

 は渦巻く妖気から離れたところに飛び移る。

「慈母に先を越されぬ様、精精頑張って探せ」

 残る神器を抱えて、は跳躍した。

 タタリ場は遥か下にあり、美しいナカツクニに黒い蟠りが続いている。

 慈母が目覚めるまでは後少し。

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