人の良さそうな笑みを浮かべて、彼は俺の身体を縛るんだ。 そして俺はそれを拒絶せず、むしろ喜んで受け入れるんだろう。 「ねぇ、今日呼び出されてたね。告白でもされたの?」 もう誰もいない教室の窓を開けて、周助は俺に笑みを向けた。 赤い夕陽が周助の茶色の髪を眩しく反射させ、俺は目を細めて周助を見つめた。 「……なんでも知ってるんだな、周助は。でもちゃんと断ったぞ?」 テニス部レギュラーで天才と言われている不二周助に告白されたのは、今年の春で周助は柔らかく笑っていたのを覚えてる。 『くんだよね。僕と付き合ってくれるかな』 本当にどうしようかと迷った。まさか女子に人気の、しかもテニス部レギュラーで忙しいはずなのに付き合う暇なんてあるのか。 でも、本当に迷ったのは数秒で、俺は自分に選択権が無いと知った。 あの優しい笑みを浮かべて、温かい腕に抱きしめられたから。 「付き合っても良かったのに。一度やって見たいんだよね」 「何をだよ」 本当に付き合う事になったらどうなるのだろうと、想像する事を拒否して俺は頭から追い払った。 「僕とその子を並べてどっちが好きなの? とか、僕を捨てるんだね?とか、皆の前で言ってみたいかな」 「お願いだから止めてくれ」 どう考えても嫌な噂が立ちそうで、恐ろしいと思う。 その反面、言ってしまえば周助と離れる事はないと思えて、嬉しい気持ちがあるのには自分自身末期だと感じた。 「俺には周助しかいないからって言って来たし。大丈夫だろ」 けろっと俺がそう言うと周助は少し驚いたような顔をして、机に突っ伏した俺の真正面に歩いてきた。 「本当に言ったの?」 「一回くらい言ってもいいだろ。本当かどうかなんて証拠はないんだから」 「証拠なら心の中……かな」 そう笑った周助が綺麗で、俺は周助を抱きしめて柔らかい髪に口付けをした。 「、好きだよ」 周助からのキスは甘くて、一度知ってしまえば簡単にはやめられない、毒のようだった。 |